[KATARIBE 12495] HA06 : Story :「木蓮賦」

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Date: Fri, 2 Apr 1999 19:04:37 +0900
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 12495] HA06 : Story  :「木蓮賦」 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199904021004.TAA21569@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 12495

99年04月02日:19時04分30秒
Sub:HA06:Story:「木蓮賦」:
From:E.R
こんにちは、E.Rです。
ソードさん、こんにちは。

うう、誘惑に耐えかねて、時間飛び越して話書いてしまいました。
……ごめんなさいごめんなさい(汗)
でも、こんなはずいもん、来週になったら出せない〜

美都さん、名前は出してませんが、お借りしてます。
ユラさん宅に向かう、一歩前ですね。

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「木蓮賦」
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 日のあるうちに外を出歩くのが、久しぶりであるのだ、と、
歩きながら気がついた。
 気がつかないうちに、一面春の大気になっている。
 風の手触りが、柔らかい。

 足音を横に聞きながら、歩く。
 小滝さんのいるグリーングラスまでは、大した距離ではない。

 日の光が目につき刺さるようで、けれども空を仰がないのも勿体無いような
そんな良い天気で。
 振り仰いだ空に。

「あ」

 木蓮の花は、光を慕うように咲く。
 まあ、どの花でも同じなのだろうが……特にこの花は大きいから、
蕾が天を指して立ちあがっているように見える。
 白い、花。

「……あの?」
「あ、悪い」
「いえ」

 やはり一緒に振り仰いで。

「何の花ですか?」
「木蓮」

 木蓮の花は、どこか間が抜けている。
 桜のように、危うく尖ったところがない。
 まあるいまあるい、と、笑ったのは、誰だったか。

「お好き、なんですか?」
「うん」

 真っ正直に光を浴びて、膨らんで。
 散り際も、決して潔くは見えない。
 大きな花びらがかさかさと茶色く枯れて、そのまま落ちて行く。

「隙だらけだからほっとする」
「ほっとする?」

 白い花は、光を跳ね返すのではなく、受け止めているように見える。
 光を、その花びらでやわらげて。
 
 人の目に、賞賛されようとも、潔くないとさげずまれようとも。
 それをすとん、と、やはりまあるく受け止めているように……
 ……見てしまうのは、多分、擬人化の行き過ぎなのだろうが。

 何となく、苦笑が浮かぶ。
 足元には、雪柳。

 さよなら さよなら 
 あなたはそんなに その手を振る

「……パラソルを振れば、中原中也か」
「はい?」
「いや……」

 どの花も、どの花も。
 迷うのは人ばかり。

「……って、悪い。小滝さんが待ってる」
「……はい」

 午前の陽光。
 迷いを吹き切るような、あお。

 木蓮の花は、やはりほっとする色を空に放っている。
 静かな色を、空に放っている。

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 というわけで。
 やはり、一瞬です。
 ……蝙蝠と呼んでやろう(をひ)>店長

 ではでは。




    

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