[KATARIBE 12317] [HA06]:EP 「明けない、夜」続き

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Date: Thu, 18 Mar 1999 04:27:39 +0900
From: Masaki Yanagida <yanagida@gaia.fr.a.u-tokyo.ac.jp>
Subject: [KATARIBE 12317] [HA06]:EP 「明けない、夜」続き
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 ども、D16です。
 ずっと前に流した「明けない夜」続き流します。
 前回の取りまとめも後で流すとします。
 それでは、

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 ○ビデオの噂
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 直紀		:「“呪いのビデオ”ってなにさ」
 
 とろりとした週日野菜をごきゅごきゅと飲み干しつつ直紀は尋ねた。
 と、紘一郎はかばんの中から黒ファイルを取り出した。
 そう、その黒ファイルこそ吹利のあらゆる都市伝説が書かれている。
 記述は短いものから数頁に渡るものまで多種多様。
 その手が一つのページで止まる。わりと新しい記述のそれは、

 都市伝説No.2956「呪いのビデオ」

 紘一郎	:「“呪いのビデオ”は最初高校生の間で広がった話なんだ
		:話の基本パターンはレンタルビデオ屋の邦画の棚、古くて
		:あまり回転も良くないやつのビデオがたまに入れ替わって
		:いてなぜか店員も知らずにぞれを貸してしまう。ラベルが
		:ついてないから家に帰って見る時点で違いに気がつく」
 直紀		:「ふんふん」
 紘一郎	:「ここでパターンが二つに分かれる。一つは見なかったと
		:き。そしてもう一つが見てしまったとき」
 すー		:「見なかったらどうなるの?」
 紘一郎	:「何も起きない。その代わり大抵あとからそのビデオが呪
		:いのビデオだって気がついてぞっとする」
 直紀		:「……」
 すー		:「呪いってなによう」
 紘一郎	:「もう一つのパターン、見てしまったときに呪いがかかる
		:、つまり、それを見た人間はそのビデオに描かれていたよ
		うな死に様で13日の間に死んでしまう」
 すー&直紀	:「……」
 紘一郎	:「これがはっきりしてるパターンで、マイナーチェンジは
		:それこそ数多い。ただし、共通点はビデオ屋でラベルのな
		:いビデオを借りてきて。見てしまうと不幸で、見ないとラ
		:ッキーってことになる。こういうのって、姉ちゃん職場で
		:聞かない?」
 直紀		:「……もしかしたら、あれかな」
 紘一郎&すー	:「!」
 直紀		:「けど、何も変なの映って無かったよ?」
 すー		:「見ちゃったの?」
 直紀		:「うん」
 紘一郎	:「実際にそれらしいのがあったって事?」
 直紀		:「それかどうかは知らないけれど……多分、うちの会社の
		:素材テープが紛れこんだんじゃない」
 紘一郎	:「どこにある?そのテープ」
 直紀		:「そのへんにころがってない?ふーなんか疲れが取れない
		:なぁ」
 すー		:「会社の方連絡したの?」
 直紀		:「すー。電話してよぉ。代わりにぃ」
 
 そう言うと直紀はまた布団の中に潜りこんだ。
 
 数分後。
 紘一郎	:「姉ちゃんみつかんないぞ。って、寝てるか?」
 すー		:「なんか、ほんと疲れてるみたい。熱とかはないみたいだ
		:けど」
 紘一郎	:「テープ、何処に行ったんだろうな……」

 その時、紘一郎とすーは事態の重大さにまだ気がついていなかった。


 ○そのころの松蔭堂
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 煖		:「なにも、映ってませんねぇ」
 前野		:「いや、画面が暗いだけだ。一さんこれ、野外で撮影した
		:ものですね。やっぱりマニアックな」
 十		:「……いや、心当たりは無いなぁ。って、何がマニアック
		:だってんですか」

 他愛もない会話の合間にも、テープは進む。
 
 ぼうっと、光が明滅する。青い光、緑色の光。揺らめく様は蝋燭の炎のよう
にも、蛍のようにも見える。

 花澄		:「これ、葉ずれの音ですよね」
 
 スピーカーから聞こえる雑音はマイクに吹きつける風の音だった。
 花澄の言うとおり風はざん、ざんと一定の間隔で吹きつけているらしい。

 前野		:「どっかの修学旅行の露点風呂の隠しどりですか?」
 十		:「ちがうってば、これは、なんだ?」
 煖		:「あ、光、動いてません?」

 ゆっくりと画面の中で光が動く。
 画面の左上隅にまるで虫が這うようなスピードで動き、そこから右下隅に動
き始める。

 と、画面が止まった。

 花澄		:「煖ちゃん?なにか?」
 
 猫族の集中力のまま画面にくいいる煖。
 
 前野		:「静止画像じゃ荒れて、見にくいだろう」
 十		:「いや、何とか見えないわけでも……」
 煖		:「……これ、人ですよね」
 
 煖が画面を指差す。
 花澄の目には暗闇が映っているだけだ。
 十が画面の明るさ、コントラストをいじる。
 どうにか、人影にも見え無くもない姿が花澄の目にも見えた。

 十		:「このテレビじゃこんぐらいが精一杯ですね」
 前野		:「画像を取り込んで、フォトレタッチすればかなり見える
		:と思います」
 花澄		:「え、と。どうしたんです?」
 前野		:「サブリミナルの手法です。暗闇の中、明かり、ノイズ。
		:その中に、幾つかの暗示を仕込ませてある」
 十		:「煖ちゃんの猫族の目だから見られたんだろうな」
 前野		:「もっとも、ありふれた手ですから気がつけば大丈夫でし
		:ょう」
 花澄		:「でも、なんで?こんな物が?」
 前野		:「十さん、まさかこれを美少年に見せると……?」
 十		:「笑えない冗談だね。とにかく、このテープはもともと僕
		:が持ってたものじゃない。多分直紀さんが昨日持ってきた
		:テープの一つだと思う」
 前野		:「何にせよ、ただの悪戯にしちゃ手が込んでる。本当に心
		:当たりは?」
 十		:「……ない。こんど誰かに聞いてみよう。紘一郎君なら何
		:か知ってるかもな。吹利の怪奇現象には彼は詳しい」
 前野		:「十さん。これ借りてゆきます。解析してみます」
 十		:「頼む。多分、悪戯だと思うが」

 煖		:「くっしゃん」
 花澄		:「風かしら?」
 
 いつのまにか日は落ち、夕闇が松蔭堂に忍び寄りつつあった。

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 全然話が進んでないように見えますが……。
 このあと、直紀さんが体内の水の気のバランスを崩して、病床につきます。
 おそらく、最初に気がついてしかも最も効果的な治療ができるのは、ユラと
狭淵麻樹さんの東洋医学コンビだと思います。
 つーわけで、不調に関して勇魚まかせた。

 ビデオの方ですが、これは一見サブリミナル物に見えますがそれはフェイク
で実際には術者による呪詛です。この辺見破るの、ハリにゃよろしく。

 噂ですが、敵がダミーとして流した情報で、実際にはほとんど被害者は出て
いません。敵はこっちの噂で初期捜査を攪乱しようとしています。

 ひとまずこのへんで。

柳田真坂樹(Masaki Yanagida)
東京大学農学部森林理水及び砂防研究室
研究生
e-mail:yanagida@gaia.fr.a.u-tokyo.ac.jp
    

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