[KATARIBE 12122] HA06:EP :「紅梅白梅」

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Date: Mon, 1 Mar 1999 18:01:32 +0900
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 12122] HA06:EP :「紅梅白梅」 
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199903010904.SAA28034@www.mahoroba.ne.jp>
Posted: Mon, 1 Mar 1999 18:04:54 +0900
X-Mail-Count: 12122

99年03月01日:18時04分52秒
Sub:HA06:EP:「紅梅白梅」:
From:E.R
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EP「紅梅白梅」
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 某日、午後三時頃。
 土手を走る道沿いに並ぶ白梅は満開で、数歩を進める毎に、ほろ、と白い花片が落ちてくる。
 吹雪、ではない。例えるならばぼたん雪に近い。
 ほろ、と、忘れた頃に花は散る。

 花澄    :「…………(あら)」

 その、木の下に誰かが座り込んでいる。
 声をかけようかどうしようか、と迷っている間に、その誰かが振り返った。

 美樹    :「あ、こんにちは」
 花澄    :「こんにちは」

 本屋で見慣れた顔が、いつもの見慣れた笑顔を浮かべてこちらを見ている。

 花澄    :「お花見……梅見、ですか?(笑)」
 美樹    :「はい(にこにこ)」

 手元には本と……タッパー。

 花澄    :「……?」
 美樹    :「ああ……(自分の手元を見て)……おひとつどうぞ」

 くすんだ緑の丸い……

 花澄    :「梅の、実、ですか?」
 美樹    :「梅酒から引き上げたのがまだ残ってましたから」
 花澄    :「……風流ですね(笑)」

 どうぞ、と、もう一度勧めるようにタッパーを差し出される。
 一礼して、中身を一つつまむ。
 そのまま、やはり梅の木の下に座る。
 微かに、香。

 花澄    :「ここは、白梅ばかりなんですね」
 美樹    :「紅梅のほうがお好きですか」
 花澄    :「と、いうわけでもないんですけど……」

 どこか仙人を思わせる幹から、ごとん、と叩きこんだような角度を描いて
 枝が突き出している。

 花澄    :「白梅は文句なく好きですけど、紅梅は色を選びます」
 美樹    :「色ですか?」
 花澄    :「桃色、というか……紫のきついのはあまり好きじゃないんです。
       :どちらかというと朱の勝った古式めいた色……それだと白梅より
       :好きなんですけど」

 朱の勝った……と、繰り返して、相手は少し首を傾げたが、

 美樹    :「……ああ(ぽむ)」
 花澄    :「?」
 美樹    :「花札の梅の色ですね(にこにこ)」
 花澄    :「…………(汗)」

 言われてみればその通りであるから情けない。

 返事を保留して、梅の実を齧る。
 すう、と、香が漂う。

 春の先端の、一日である。

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 てなもんで。
 この前の、一行思い出しまして。
 書いてみました。

 ではであh。  




    

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