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Date: Mon, 15 Feb 1999 13:58:52 +0900
From: ソード <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 11968] [HA06]:EP :「電操士」最終話
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199902150502.OAA07299@www.mahoroba.ne.jp>
Posted: Mon, 15 Feb 1999 14:02:49 +0900
X-Mail-Count: 11968
99年02月15日:14時02分43秒
Sub:[HA06]:EP:「電操士」最終話:
From:ソード
「電操士」最終話です。
ようやく完成しました。修正してくださったごんべさん、協力有り難うございます。
登場人物
御剣 司(みつるぎ つかさ):ビルの電流を浴びて目覚めた電操士。
「電操士」最終話
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路地裏で司が気絶してから、数分が経っていた。祐司は、彼の傍らに座り、
本を繰っている。
司 :「ん……」(目を覚ます)
祐司 :「あ、気ぃつきましたか?」
司 :「あ……えーっと?」
祐司 :「覚えてますか?もう、暴走はしてへんみたいやけど……」
司 :「あ!(自分のからだを確かめる)俺……」(立ち上がる)
祐司 :「大丈夫みたいですね」
司 :「あ……貴方が助けくれたんですね?」
祐司 :「覚えてます?」
司 :「はい。記憶はあります。どうもご迷惑をおかけしました」
祐司 :「いえいえ、私が勝手に首突っ込んだだけですから」
司 :「あ、僕、御剣 司っていいます」(名刺を取り出そうとする)
祐司 :「ああ、堀川 祐司といいます。紅雀院大で講師をやってます」
:(名刺を出す)
司 :(名刺を出して)「あ……」
司の手の中には、先程の放電現象によって黒焦げになった名刺があった。
祐司 :「(くすっ)黒焦げですね」
司 :「すみません……(名刺を受け取る)」
祐司 :「……(どうしよ、根掘り葉掘り聞くわけにもいかんしなぁ)」
司 :「(名刺を見ながら)堀川 祐司さん」
祐司 :「はい?」
司 :「……少しお時間よろしいですか?」(じぃっ)
祐司 :「ええ(よかった、話してくれはるみたいやわ)」
司 :「じゃあ、どこか……(腹がなる)……あ……」
祐司 :「あはは、じゃあ飯の食えるとこにでも行きますか」(歩き出す)
司 :「はい(おかしいな?昼飯食ったよな……昼休み!)」
既に、ゲーセンに行った時点で10分ほどしか無かった昼休みは、完全に
終っている。
司 :「すみません。会社に電話を……(携帯電話を取り出す)」
祐司 :「あ、ええ……(壊れとるんやないかな)」
路地から出たところで、携帯電話を手にとり、操作をするが、携帯は何も
応答しない。
司 :「あれ?」
祐司 :「壊れとるんや無いですか?すごい電磁場やったし」
司 :「そうですよね。はぁー(ため息)。公衆電話に行ってきます」
祐司 :「ええ」
公衆電話で会社に電話をかける。電話は、1回鳴っただけでつながった。
社長 :「はい。トライ製作事務所です」
司 :「あ、司です」
社長 :「おう、司か。どうする?」
司 :「どうするって……。早退しても良いですか?」
社長 :「一人なのか?」
司 :「?。何のことです?」
社長 :「一人なら、早退を許すわけにはいかない。誰かと一緒なのか?」
司 :「はい。……知り合いと一緒です」
社長 :「納期を遅らす。気にするな」
司 :「駄目です!納期は守ります。明日にはあげますよ」
社長 :「……分かった。任せる」
司 :「(なんなんだ?)はい。それじゃあ、お先に失礼します」
電話をおろし、祐司の元へと戻って来る。今は、社長の不可解な言動を気
にしている場合ではない。
司 :「行きましょうか……って、僕、あまりこの辺の事知らないんで
:すよ」
祐司 :「まあ、駅前に出たら、なんかあるでしょ」
駅前のファミリーレストランに入る。平日の昼過ぎだけあって、あまり客
はいない。『マリカ』。東京では聞かない店名だった。
店員 :「いらっしゃいませ〜!2名様でよろしいですか?」
司 :「あ、はい」
店員 :「お煙草は、お吸いになられますか?」
司 :「僕は吸わないけど……(祐司を見る)」
祐司 :「いや、僕も吸いません」
店員 :「ご案内致します。こちらへどうぞ」
窓際の席へ通される。店内は日差しが差し込み、明るく、温かい。
司 :「なんか、すごい制服ですね……スカート短いし……リボンつい
:てるし」
祐司 :「ええ……」
目のやり場に困り(?)ながら、二人は注文を済ませた。しばらくして、料
理が運ばれて来る。司はランチを頼んだが、祐司はコーヒーだけだ。
しばし、無言で箸を動かす司。祐司は、黙って待っていた。
司 :「すみません。さっき食べたばかりだったんですが」
祐司 :「いや、落ち着きましたか?」
司 :「はい……じゃあ、改めて、有り難うございました」
祐司 :「いえいえ……でも、どうしてあんなふうに?」
司 :「実は……」
しばらくの沈黙が流れる。
祐司は、ただじっと待っていた。今までの事を思い返しながら。伽耶子が
生まれる前の自分を、目の前の青年に重ねる。
司は、今までの事を思い出していた。事務所の崩壊。異能の覚醒。恋人と
の離別。彼は、東京から逃げてきたのだ。
司 :「変な力だと……思いますか?」
祐司 :「そんなことはありません。私も、他人の異能力を見るのは初め
:てですけどね」
司 :「数ヶ月前に、ビルの電流を受けまして、それからなんです」
祐司 :「(生まれつきやないんか……)」
司 :「まあ、フロッピィのデータやマシン語が理解できるようになり
:ましたし、最初は戸惑いましたけど、今は何とか制御出来るよう
:にしたんです」
祐司 :「わずか数ヶ月で……それは大した物だ。しかも、データの内容
:まで読めるなんて」
司 :「ゲーセンが、電子機器の巣くつだと言う事を、すっかり忘れて
:て、軽い気持ちで心構えもせずにデータを受け取ってしまって…」
祐司 :「それで……」
司 :「ええ、元々、びっくりしたりすると静電気を発してしまうので、
:それが暴走したんだと思います」
祐司 :「なるほどなぁ」
司 :「本当に、有り難うございました」
祐司 :「いやいや、こちらこそ……私以外に、同じような能力者がいる
:とは思ってなかったんで、これからも、よろしくお願いしますわ」
司 :「あ、はい。ところで、堀川さんの能力って、僕の能力と若干違
:うみたいですけど……」
祐司 :「ええ、自分の体内の電位を変化させる事で、外部にも影響を与
:える事が出来るんですわ」
司 :「何と無く分かります。ものすごい電力を体内に溜めておけるん
:ですね。しかも、外部への漏れは完全にシャットアウトしてる」
祐司 :「そこまで分かるんですか?」
司 :「はい。フロッピィディスクの磁気パターンも読めますから」
・
・
・
彼らの会話は、夕日がビルにかかるまで続いた。今まで求めていた同類が、
目の前にいる。そして、今まで話せなかった自分の能力を曇らぬ目で聞いて
くれる。
祐司 :「お、そろそろ帰らんと」
司 :「そうですか。じゃあ、ここは僕が出しますよ」
祐司 :「いや、そういうわけにもいかんです」
司 :「助けてもらったわけですし……(財布を取り出す)」
たしか、1万円札が数枚入っていたはずだ。今日、ゲームソフトを買う予
定だったのだから。
司 :「(財布の中身を見る)……」
祐司 :「……(どうしたんや?固まったで)……御剣さん?」
司 :「あ……すいません。お金貸してください……(涙)」
そう言って、彼の差し出した財布の中には、黒焦げになったお札の残骸が
残っているだけだった……。
(完)
***************
と言うわけで、終了です。
マリカに乗り込んでいますので、追加、修正など、有りましたらお願いします。
特に、マリカ新制服の描写はもっとあってもよいかな?と思っております。
それでは、また。