[KATARIBE 11810] [HA06][EP] 「休日………朝微睡」

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Date: Fri, 5 Feb 1999 14:35:20 +0900
From: fukanju@trpg.net (R.Fukanju)
Subject: [KATARIBE 11810] [HA06][EP] 「休日………朝微睡」
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199902050534.OAA29863@trpg.net>
Posted: Fri, 5 Feb 1999 14:33:44 +0900
X-Mail-Count: 11810

ども、不観樹露生です。

  夢鯨のはくはく君(漢字が出ない(汗))の話、
その後日譚(完結してないのに(汗))というか、
美樹の帰還直前あたりの話です。

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「休日………朝微睡」

>Maki

  ファンヒーターが、点火する。音。
  眼を閉じたまま、目を覚ます。
  現実認識が、ゆっくりと降りてくる。
  朝だ。
  意識が醒めはじめる。
  気付く。
  休日。
  醒めかけの意識をそのままに捨て置く。
  精神と肉体に蓄積した疲労を回復するべき休日。
  身体を動かさないまま、力を抜く。

>Miki

  バスの低いクラクション。
  そして、エンジン音。
  薄目を開く。寝袋の隙間をわずかに開くと夜明け前の薄明と寒気
が流れ込んでくる。
  朝になってしまった。少しだけ、頚を動かす。まだ、眠い。
  寝袋の中で左によってしまった毛布を身体にまき直す。
  昨晩は、この街に辿り着くために少々無理をしてしまった。だか
ら、まだ身体に疲労が残っている。
  もう一眠りしても、いい。大丈夫。
  予定に追われる旅ではないのだから。
  あとは、家路を辿るだけの旅なのだから。
  寝袋の上で、わたしの身体から発する熱で暖をとっていた猫がひ
とつ、ゆっくりと身じろぎした。

>Dream

美樹:「海…………ですか」

  呟く。夢の海。その波飛沫のかからぬほどの空に浮かんで。

麻樹:「あぁ。海だ」

  並んで、浮かぶ。
  海面を冷たい風が吹き抜けていく。
  湯気が上がる。
  北西の季節風。
  暖流の上を吹きすぎて、故郷へ雪を降らす。

美樹:「あれは、夢鯨の………」

  浪間に、小さな白い影。ときおり三角波にあおられて。

麻樹:「あぁ。あの時のだな」

  食欲魔人たちの夢。夢の中で食べられかかる夢鯨。

美樹:「お元気そうで、何よりですな」

  なにげに眼を細める。

麻樹:「夢を、また繋げてくれたか」

  小さな苦笑。

麻樹:「いつ、帰ってくる?」

  振り向かず、尋ねる。

美樹:「用件は、もう終わってますから」

  表情は、変わらない。左の拳に、腱が白く浮く。

美樹:「後は帰るだけです。そう、来週の頭ぐらいには吹利に着け
        そうな感じですね。あ、お土産はいりますか?」

  失うことも、失わないことも。全ては変わらない目元の中に。

麻樹:「死なずに帰ってこい」

  短く。

美樹:「そう言うと思ってましたけどね」

  苦笑。
  猫の鳴き声。人の足音。

美樹:「あぁ、そうだ。吹利の街のみなさんにもよろしく言ってお
        いて欲しいです」

  想い人。

麻樹:「暇があったらな」

  海面から上がる湯気は、もうもうと二人を覆い隠して。

美樹:「それでは」
麻樹:「あぁ」

  夢が、途切れる。

>Miki

「よぉ、あんちゃん。おきたかぁ」
  昨夜、少し話しをした路上生活者の老人。
「はぃ。あぁ、もう日が昇ってますね」
  寝袋から、身体を引きずり出す。
  寝袋の上から、猫が驚いて飛び降りる。
「えぇ夢でも見れたかね」
  寝袋を敷いていたベンチの下から、スニーカーを取り出す。
「えっらく気持ちよさそうに寝とったけんなぁ」
  スニーカーに足を突っかける。
「久々に、妹の夢を見ました」
  立ち上がりながら、応える。
  脱いでいたコートを着込む。寝袋を丸める。
「そぉかぁ。儂も死んだつれ合いの夢を見たぞ」
  しわの中で、顔が笑う。
  わたしも合わせて笑いながら、自転車に装備をくくりつけていく。
「それでは、お元気で」
  振り返って、別れの言葉。
「あんちゃんも、事故らんようになぁ」
  吹利へと続く道へと。漕ぎだしていく。

>Maki

  戸の向こう側ではしゃぐ子供の声。
  目覚めてもよい頃合。
「こらこら、麻樹さんはまだお休みなのですから」
  若大家の声。
  起き上がる。部屋は十分に暖まっている。
「さっき起きたが」
  戸の向こう側へ返事をしておく。
  起き出す。着替える。
  瑞鶴までそぞろ歩いて、夢鯨の話でもして。
  ついでに、香草茶でも買いに行って。
  尋ねられたら、莫迦兄貴のことでも話してやることにしよう。

                                                      (終)

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  こーゆー連絡の取り方をしてたから、
ちゃんと迎えに来れたんですね〜〜(笑)

  あ、不都合があったら、訂正追加修正などお願いいたします(^^;

  つうことで、では。



    

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