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Date: Tue, 26 Jan 1999 18:35:36 +0900
From: "E.R" <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 11710] HA06:Story: 「 300円の仁義」
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199901260933.SAA12449@www.mahoroba.ne.jp>
Posted: Tue, 26 Jan 1999 18:33:25 +0900
X-Mail-Count: 11710
99年01月26日:18時33分20秒
Sub:HA06:Story:「300円の仁義」:
From:E.R
こんにちは、E.Rです。
人に変ずる猫さんの多い昨今ですが(嘘)
頑として猫、を書いてみたくて。
たんぽぽちゃんが来てくれた、その、後日談です。
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「300円の仁義」
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「……300円もするかぁ?」
きこきこと、レジで缶を開けながら、店長がぼやく。
「相場だと思うけど?」
紙皿とスプーンを取ってきた花澄が笑う。
猫は悠然と、いつもの場所に陣取っている。
先日、おつかいにやってきた猫又少女に渡した猫皇帝の缶。
「いつもの猫さんに」と、ユラがくれたものだっただけに、
元々の所有者に、買って返す必要があるのは、まあ当然では、ある。
当然では、あるのだが。
「だってなあ、蟹缶3つで千円だろ?それと張るぞ」
「蟹缶より美味しいんでしょ、猫には」
「貧乏学生より贅沢だな」
どこかで、ベーカリー常連組がくしゃみをしかねない台詞である。
花澄が、くすくす笑った。
「300円で通る仁義なら、安いものじゃない」
「……まあそうだ」
開けた缶から、紙皿に中身を移し、猫の目の前に置く。
一つ小さな欠伸をして、猫がゆっくりと身を起こす。
「なんつうか……こいつって」
まるで当然のように皿に向かい、はぐはぐと食べる。
「こういうのが猫又になる、っていうと、納得できるんだがなあ」
ぴょんぴょん跳ねながら猫皇帝を欲しがっていたたんぽぽと好対照である。
「そうかなあ?」
猫の側にしゃがみ込んだ店長からスプーンと缶切りを受け取りながら、花澄が
一つ首を傾げる。そのまま彼女はやはり猫の側にしゃがみ込んだ。
「何だか、20年経とうが30年経とうが、しっかり猫やってそうに思うけど」
「……成程」
年を経た猫が、人間に変じる……進化する、というのは、もしかして、
人間の側の思い上がりではあるまいか。
人となる権利を得たとして、この猫が人を選ぶとは限るまい。
ゆうらりと、日だまりの中でまどろむこと。
時には飢えて、ごみ箱を漁ること。
そしてどことも知れぬ場所で、のたれ死んでゆくこと。
その全て含めて、猫は猫であることを選ぶかもしれない。
はぐ、と、やはりどこか悠長に猫が餌を食べている。
兄妹揃って、それをしゃがみ込んで見ている。
ゆうらりとした、小春日和の午後のことである。
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みたいな。
猫、好きです。
ぶちゃ猫が屋根の上でふくふくしてるのって、好きです。
あの猫、私のことを「をを、なんだい下っ端」くらいに思ってたんだろうなあ。
ではでは。