[KATARIBE 11369] HA06:EP: 「飛翔の条件」

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Date: Thu, 1 Oct 1998 18:32:27 +0900
From: "E.N." <nakazono@ss.ffpri.affrc.go.jp>
Subject: [KATARIBE 11369] HA06:EP: 「飛翔の条件」
To: kataribe-ml@trpg.net
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In-Reply-To: <9809300909.AA01477@150.26.109.137.ss.ffpri.affrc.go.jp>
Posted: Thu, 01 Oct 1998 18:38:54 +0900
X-Mail-Count: 11369

                  こんにちは、いー・あーるです。
                皆さん、こんにちは。

 昨日、帰りながら、ふと思いついた短EP。

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EP  「飛翔の条件」
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  じとじとと長雨が止むそぶりも見せない秋の午後。
  土手の上の道を、花澄が歩いている。
  雨よりも視界を遮る傘を揺すぶるように、風が吹く。
  視線はぼんやりと、揺らぐ傘に向かう。

  訪雪     :「ああ、こんにちは」

  声をかけられて、花澄は慌てて顔をあげた。

  花澄     :「あ、こんにちは……」
  訪雪     :「配達ですか」
  花澄     :「はい」

  傘を差す袖口が、かなり濡れそぼっている。
  片手に白いビニール袋を下げて。

  花澄     :「こんな雨の中、お買い物ですか?」
  訪雪     :「無くなって困るものほど、こういう日に無くなるもんですな(苦笑)」

  ざあ、と、雨混じりの風が吹く。
  紺色の傘があおられるのを、やはりぼんやりと花澄は見ている。

  あおられ、手元から離れて、宙に浮く……

  花澄     :「知っているから、飛べないんですね」
  訪雪     :「は?」
  花澄     :「空を飛べないって知っているから、空を飛べないんじゃないかな」
  訪雪     :「花澄さんが、ですか?」
  花澄     :「私に限らず、人が」

  人は空を飛べないものだ、と、何故か人は知っている。
  人は空を飛ぶものだ、と、知っている人ならば、飛べるのではないだろうか。
  今日の次に明日が来るように、ごく自然に知っている人ならば。

  人は空を飛べないものだ、と、しかしやはり自分は知っている。
  手元で揺れる傘を、引き止める手のように。

  ざん、と、傘がまた揺れる。

  花澄     :「……益体もないことです(苦笑)」
  訪雪     :「そ…う、ですかな(苦笑)」

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  以前、訪雪さんのEPで、自転車に乗って空を飛び……かけて
落っこちる、というのがあったのを記憶しております。
  花澄の場合は、てくてく歩いてて飛ぶ、というイメージですね。

  今日の次に明日が来る。
  それくらいごく自然に飛べるって知っているから飛べるのかな、と。

  ではでは。

 
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  『Hitch your wagon to the Star in Heaven』
 
          いー・あーる(nakazono@ffpri.affrc.go.jp)
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