[KATARIBE 11353] [HA06] EP「台風一過」

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Date: Sat, 26 Sep 1998 00:44:36 +0900
From: edamatsu <edamatsu@gold.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 11353] [HA06] EP「台風一過」
To: "語り部ML" <kataribe-ml@trpg.net>
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Posted: Sat, 26 Sep 1998 00:34:20 +0900
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ども、くすのきです。
こないだ一行掲示板でながれた、ゆずちゃんと銀杏の古木の会話を
抜き出して、エピソードにしてみました。

いー・さん、お忙しい中添削して下さり、ありがとうございました(礼)

でわ☆

EP:「台風一過」
**********
遅刻気味の台風がさんざん暴れまわって、そして過ぎていった翌日。
空はまだ薄曇りで、時折、少し強めの風が雨合羽のフードから覗く
揃ったおかっぱを、無理矢理に引っ張りまわす。

譲羽:「……ぢいっ」

裾をはためかせながらもしっかりと動かない譲羽。
どことなく勇ましげな姿で見つめる先に、一本の古木が
文字どおり聳え立っている。

☆☆☆
天気の悪い日には外に出ないように、って言われているけど。

パン屋の店長さんがいつか話してた、おおきくて古い銀杏の木。
絶対会いに行こうって思ってた。
でも、なにもこんな日に見に行かなくてもいいじゃないかって
闇縫い君が言ってたけど。
ちゃんと雨の日用の服と靴あるからだいじょうぶ。

譲羽:「ぢいぢいぢいっ!(絶対今日、会いにいくのっ!)」

……後で怒られるかも知れないけど。


かなみちゃんの家からほんの少し離れたところにある、小さな
小さな……「神社」っていうところ。
そこに、ずっと昔からいるんだって。

譲羽:「……ぢい(おじゃまします)」

台風のせいで、神社の庭は落ち葉で埋まってるか、水溜まり
が広がってるか、のどっちか。
銀杏の木までは……どうやってもひとつかふたつ、水溜まりを
渡らないとだめみたい。でも。

譲羽:「ぢい!(長靴あるから、だいじょうぶ!)」

そぉっと、そぉっと、濡れないように、転んだら大変。
一歩。
一歩。
できるだけ、水溜まりの端っこを選んで。

譲羽:「……ぢい(ふぅ)」

神社の入り口からずっと見えてた銀杏の木。
側に寄ってみると、とても大きくて、色もなんだか黒くて。

譲羽:「……(見上げる)」

見上げても先なんか見えないし、触ったら固くてごつごつ。
なんだか……松陰堂の「先生」みたいな感じ。

譲羽:「ぢい(こんにちは)」
銀杏:「…………」
譲羽:「ぢいぢい(ゆずね、譲羽っていうの)」
銀杏:「……………………」
譲羽:「ぢいぢいぢい(あのね、かなみちゃんのお父さんに聞いて
      :会いに来たの)」
銀杏:「………………………………」
譲羽:「……ぢ?(もしもし?)」

ひょっとしたら、お昼ねしてるのかも。
と、後ろでふいに水溜まりが波立って、落ち葉がくるっと舞い上がり。
背中をどんっと、いきなり押されて!

譲羽:「ぢ、ぢいっ(汗)」

転んで、転がって危なく水溜まりに飛び込むところだったけど。
銀杏の太い根っこが、まるで守ってくれたみたいに伸びてた。

譲羽:「……ぢい……(危なかった……)」
声    :「うーむ……誰かの?」
譲羽:「ぢ?」
声    :「わしの根っこにつかまってるのは、誰かの?」
譲羽:「ぢ、ぢいぢい(あ、こんにちは。譲羽っていうの)」
銀杏:「ゆずりは……ほうほう。本屋に住んどる、木霊の娘さん
        :じゃな。えらい風じゃったが、大丈夫かの?」
譲羽:「ぢいぢい(ゆず、大丈夫だよ。助けてくれてありがとう)」
銀杏:「ここんところ、雨と風が強かったからなぁ……若いのが
        :大勢、やれ倒れたの、やれ折れたのと騒いどったが。
        :娘さんの木はどうかね?」
譲羽:「ぢいぢい(ゆずの木、大丈夫だったよ)」
銀杏:「そりゃよかったの(笑) わしも大丈夫、と言いたい所じゃが
        :……昨日の大風で、大きな枝を折られてしもうた」
譲羽:「……ぢ?(折れたの?)……ぢい?(大丈夫?)」
銀杏:「いやぁ、なに。かえって身軽になったわい(笑)  じゃが
        :人間達には悪い事をしてしもうたか……落とした枝で、ほれ。
        :神社の屋根をへこませてしもうた」
譲羽:「ぢい」
銀杏:「日当たりに任せて伸ばしておったから……重さも相当なもん
        :じゃろうなぁ」
譲羽:「ぢいぢいぢ(でも、折れた所の葉っぱも可哀相なの)」
銀杏:「うむ。葉っぱもなぁ、可哀相な事をした。これから少しずつ色
        :を変える相談をしとったとこなんじゃが……」
譲羽:「ぢ……」

悪い事言ったかな……と、反省。
そしたら

銀杏:「なんの、葉っぱはまだたぁくさん残っとる。娘さんが気に病む
        :ことはない(かんらからから)」

って、笑って言ってくれたから。

譲羽:「ぢ(安堵)……ぢいぢい(じゃ、他の葉っぱはみんな黄色に
        :なるねっ)」
銀杏:「あぁ、そうとも(笑)今年は、今まで一番奇麗な色に染め上げよう。
        :その時は見に来てくれるかの?」
譲羽:「ぢいぢいっ(うん、かすみと一緒に見に来るねっ)」
銀杏:「ほうほう。楽しみにしておいで(笑) では、入り口まで送ろうかの」

銀杏が少しだけ揺れると、葉っぱと小枝が落ちて並んだ。
出来上がったのは、入り口まで続く小道。

銀杏:「葉っぱの道と、小枝の橋を渡っていけば。泥土も水溜まりも
        :気にする事はなかろうよ(笑)」
譲羽:「ぢいぢい(ありがとう)」

お礼言って、振り向いて歩き出す。
☆☆☆

曇っていた空の色がそこかしこで途切れ途切れになっていき
青くなったところから少しずつ陽が差して来る。
風も気まぐれに吹くのをやめたのか、今は軽く吹き抜ける程度。
湿って重かった空気も、軽く、さっぱりと。

台風一過である
**********

以上、オチちゃえ(笑)

えー、くすのきの方はと申しますと。
最近「雨男技能」がレベルアップしたのか、

「バイクに乗ったら濡れ鼠」

なのが続いてます(泣)
かといって、電車乗ったらカサが無駄になるからなぁ……
うぉぉ、雨男はいやー!(目の幅涙)

くすのきでした。
edamatsu@gold.ocn.ne.jp
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