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Date: Thu, 3 Sep 1998 18:55:20 +0900
From: "E.N." <nakazono@ss.ffpri.affrc.go.jp>
Subject: [KATARIBE 11284] HA06:short: 「初秋」
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <9809031000.AA01448@150.26.109.137.ss.ffpri.affrc.go.jp>
In-Reply-To: <9809030401.AA01447@150.26.109.137.ss.ffpri.affrc.go.jp>
Posted: Thu, 03 Sep 1998 19:00:42 +0900
X-Mail-Count: 11284
こんにちは、いー・あーるです。
皆さん、こんにちは。
りいんりいんと、虫が鳴く……
てんで、一瞬芸です(をい)
こんな季節なんですね、もう。
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「初秋」
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りいいん、と、一の音。
またりいいん、と、二の音。
届けものの、帰り道。
腕時計を確認し、まだ、五時を少しまわったくらいなのに驚く。
もう、こんなに日が短くなってきているのだろうか。
角を三度曲がればそこはもう、自分にとっては異世界に近い。
田んぼの稲の穂が、ゆらりと下を向いている。
葉の色が、うっすら赤みを帯びているのは、その季節のせいか、それとも
時刻のせいか。
りいいん、と、それは確かに、鈴に似た音。
りいいん、と、しかしどこかに、薄く張った布を思わせる音。
……それともこれは、先入観でしかないのだろうか?
ゆっくりと逢魔ヶ刻が近づいている。
遠くでセミの声が、どこか頼りなげに聞こえる。
影が、ゆっくりと伸びる。
道には、誰もいない。
花澄は、ふうと息を吐く。
ずうっと歩きたくなる。
ずうっと、時間の端から端まで、こうやって歩いてみたくなる。
りいいん、と、か細く張った糸のような音が意識野に忍び込む。
色と音とが、絡まりあうように。
りいいん、と、一の音。
りい………
向うから自動車。
そして……
がくんとこちらの世界に引っ張られた気がして、花澄は少し足を止めた。
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というわけで、秋ですね。
先程久しぶりに、日のあるうちに外を歩いてまいりました(爆)
そして、虫の音を聴いてまいりました。
毎度、車に乗っているからわからなかったけど、
ああ、こんなにうつくしい音なんだなあ、と。
逢魔ヶ刻、って、そういうことなのかな、と。
では。
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『Hitch your wagon to the Star in Heaven』
いー・あーる(nakazono@ffpri.affrc.go.jp)
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