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Date: Mon, 31 Aug 1998 18:11:37 +0900
From: "E.N." <nakazono@ss.ffpri.affrc.go.jp>
Subject: [KATARIBE 11236] HA06:EP: 「雨情」
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <9808310916.AA01434@150.26.109.137.ss.ffpri.affrc.go.jp>
In-Reply-To: <9808310418.AA01431@150.26.109.137.ss.ffpri.affrc.go.jp>
Posted: Mon, 31 Aug 1998 18:16:47 +0900
X-Mail-Count: 11236
こんにちは、いー・あーるです。
皆さん、こんにちは。
ここ数日、水戸の方では結構雨の被害が多いようです。
で、こちらは……
……今の所降ってもいない、と(まあそんなものです)
で、その雨の中、久しぶりに歩いて買い物に行ってきまして……
……で、EP。(しごとはどーした(汗))
フラナ君お借りします〜>久志さん
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EP 「雨情」
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ばしゃばしゃと大粒の雨が叩き付けるように降っている。
傘を深くさしながら、花澄が通りを歩いている。
夏休みももう終わりだというのに……いや、終わり故の雨だろうか。
歩道の端は少し低くなって、既に水が溜まりだしている。
ばしゃばしゃと、雨が叩き付けられている。
幾つもの水紋。幾つもの干渉波。
そしてぽこりと浮き上がる水の泡。
ドームに似た透明な膜を、花澄はふと立ち止まって見やった。
そのまま、見入る。
黙って、ただ見入る。
と……
フラナ :「かーすみさんっ」
花澄 :「はい?」
視線を上げると、小柄な少年が、黒い傘の陰から元気に手を振っている。
花澄 :「フラナ君、こんにちは(にこにこ)」
フラナ :「花澄さん、お久しぶり」
じめついて何ともうっとおしい中、フラナは制服を着ている。ズボンの裾が
ずっくりと濡れているのが近づくとよく分かった。
花澄 :「あら、でもまだ新学期始まってないんでしょ?」
フラナ :「始業式はないけど、殆ど始まったと同じだよ。もう
:ずっと前から授業あるもん」
花澄 :「それは災難……って、受験生だものね(笑)」
フラナ :「……」
憮然として髪をかき回してから、フラナは首を傾げた。
フラナ :「あれ、花澄さんは、ここで……」
花澄 :「あ、お昼買いにベーカリー行こうと思って……足が止まってました」
フラナ :「?」
無言で、花澄が水溜まりを指差す。
幾つもの水紋。幾つもの干渉波。
そして浮かび上がる、水の泡。
叩き付けられた水滴の飛沫より浮かび上がり、暫し漂っては、またぷつりと
消えてゆく。
その、繰り返す様。
花澄 :「……私ね、この手の不思議を数学で書き表すことを学んでいたの」
フラナ :「……」
花澄 :「それが一度、どうしても行き詰まって……
:何だか変な話だけど、そういうことを見ることも出来ない、
:そう、思ってた」
花澄はふい、と笑った。
花澄 :「不思議はそれこそ一杯、あちこちに転がっているのにね。
:それを見て、不思議だって思うことは、いつだって自由なのにね」
叩き付けられる水の飛沫から、どうやって泡がまあるく生まれるのか。
水溜まり一つ分の謎ですら、自分で解くには困難かもしれない。
花澄 :「不思議、でしょう」
フラナ :「うん」
花澄 :「面白いよね」
フラナ :「うんっ(笑)」
雨一つ分の不思議さえ、人の手には余る。
その広がりに安堵する。
その明るさに安堵する。
フラナ :「花澄さん、ベーカリー、行こっ」
花澄 :「はい(笑)」
ぱしゃんと足元の水が撥ねる。
撥ねた水はやはり小さな泡を生んで消えた。
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で、落とす。
久しぶりに水溜まりを眺めていました。
やっぱりあんまり雨足が速いと、泡が出来ないです。
出来た泡に、水滴が落ちては潰れ、落ちては潰れ。
見て、飽きないなあ……
ではでは。
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『Hitch your wagon to the Star in Heaven』
いー・あーる(nakazono@ffpri.affrc.go.jp)
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