[KATARIBE 11200] [HA06]EP: 『散乱』

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Date: Fri, 28 Aug 1998 18:17:16 +0900
From: lh86010@hongo.ecc.u-tokyo.ac.jp (S.S.Kakegawa)
Subject: [KATARIBE 11200] [HA06]EP: 『散乱』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199808280922.SAA29324@hongo.ecc.u-tokyo.ac.jp>
Posted: Fri, 28 Aug 1998 18:22:34 +0900
X-Mail-Count: 11200

蘆会%まっきゅがほしいにゃあでございまし。

昨日、ちと手触りのよろしいクッションをひとつ、購入しまして。
その売り場で見かけた光景を元に、思いついたものを。


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エピソード『散乱』
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 松蔭堂の雨の午後。

 四畳半の襖のおもてに、怪しい影が映る。

 闇ぬい        :「……わるいこと、するぞ」

 四畳半。いつもは滅多に入らせてもらえない、松蔭堂の秘境。
 幸いにして、その部屋の主訪雪は、いま不在である。

 闇ぬい        :「かってに、おへやはいるぞ」

 まるい手を襖の引き手にかけて力を込めると、がたがたと大きな音がする。

 闇ぬい        :「わあっ(びくう)」

 大声を出しかけた口を、慌てて押さえる。そんなことをしても、出てしまっ
た声と襖の鳴る音は止まりはしないのだが。
 開きかけた襖の隙間から頭を突っ込んで、部屋の中を覗き込む。

 障子から入る光にぼんやりと照らされた、無人の四畳半。見たこともない、
名前も知らない色々なものが、雑然と床を埋めている。
 中央の小さい半畳の上、辛うじて机とわかる四角い隆起の上に、作りかけて
箱に入れたままのロボットの模型が載っている。

 闇ぬい        :「ろぼっとだ」

 ごもくたの体積にどっかりと腰を下ろして、机の上に手を伸ばす。模型を両手でつかんで持ち上げると、テープで仮止めしてあった腕がぼろりと落ちる。

 闇ぬい        :「なんだ。このろぼっと、こわれ……わああっ」
 SE          :「がしゃ」

 顔を上げた拍子に、入口からは見えなかった部屋の隅が視界に入って、手の中の模型を取り落とす。
 押入れの引き戸の前の本の山の中から、大きく白いたまご形の物体がぬっと
半身をもたげていた。

 闇ぬい        :「こ……こわくないぞっ(びくびくっ)」

 おそるおそる近寄るが、物体は動かない。近くで見ると、白いキャンバス地
に包まれたそれは、ぐったりと壁に凭れているようにもみえる。

 闇ぬい        :「え、えいっ(ぽす)」
 SE          :「ふしゃ」

 手の先でぽこんと殴ると、軽く頼りない感触を残して、布の表面がへこむ。
生きものが入っているわけではない。ぬいぐるみのように、綿が詰まっている
わけでもなさそうである。

 闇ぬい        :「えいえいえいっ(ぽかすか)」
 SE          :「かふかふ、くしゅっ」

 ぽかぽか殴ると、たまご形が重力にしたがって崩れてくる。
 闇ぬいのこれまで人生(?)でも、このような感触に出会ったことはない。
面白くなって、たるんだ布をつかんで引き寄せようとしたとき、手が小さな金
具に引っかかって、キャンバス地の、今まで縫い目に見えていたところに、ひ
と筋の裂け目ができた。

 SE          :「ちいいいいいいいいっ」
 闇ぬい        :「なんだ?」

 ぐいと腕を振って、ボアの毛足に引っかかった金具を外そうとした瞬間。

 SE          :「ざ……ざあああああああああああっ」

 キャンバスの裂け目が大きく割れて、中から無数の白い粒が溢れ出した。

 闇ぬい        :「わ、わ、わああっ」

 慌ててばたばたさせた手から毛を引きちぎって、ファスナーのつまみがやっ
と外れる。どさっ、と畳の上に落ちた物体の裂け目からは、勢いよくつぶつぶ
が流れ出している。

 闇ぬい        :「あ、だめだ、でるな!」

 出るなと言っても、止まるものではない。掬おうとする手の間からつぶつぶ
がこぼれ、戻そうとする袋の口から、畳の上にどんどん溜まっていく。

 闇ぬい        :「わ、わあっ、だれか、きてよーっ!」

 発砲スチロールのつぶつぶにまみれ、次第に小さくなるビーズクッションの
前に尻をついて、闇ぬいはついに泣き出した。

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 訪雪は当分帰りません。
 誰か助けてやってください(笑)


 しかし……
 チャック開けたらいきなり中身が出てくるんだもんなぁ、あのクッション。
 道理でワゴンの周りに白いのが散乱してたり、中身が少々頼りないのがある
と思った。

 訪雪          :「……で、お前さんもやったのかね(じと)」
 蘆会          :「やかましわえ(殴)」

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このすてきな朝を長続きさせるのさ。
東松原蘆会(ひがしまつばら・ろかい)
                  lh86010@hongo.ecc.u-tokyo.ac.jp
 http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Namiki/6525/

    

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