[KATARIBE 10334] HA06:story: 「夜半」

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Date: Fri, 19 Jun 1998 17:10:30 +0900
From: "E.N." <nakazono@ss.ffpri.affrc.go.jp>
Subject: [KATARIBE 10334] HA06:story: 「夜半」
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <9806190807.AA01341@150.26.109.137.ss.ffpri.affrc.go.jp>
In-Reply-To: <9806150927.AA01329@150.26.109.137.ss.ffpri.affrc.go.jp>
Posted: Fri, 19 Jun 1998 17:07:45 +0900
X-Mail-Count: 10334

             こんにちは、いー・あーるです。
           不観樹さん、蘆会さん、こんにちは。

ユラさん誕生日、波乱話。
花澄側の……後日談ですね。
あれから数日後、としておきます。また雨降ってるし(笑)

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「夜半」
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  物事に、半端に関わるものではない。
  そのことを……改めて、確認する。

  雨は、夜半を過ぎても止まない。
  街灯が、しおしおと瞬いている。

 「……ごめんなさい」

  小さく呟く。
  纏いつく春を、今は振り切ってここにいる。
  
 「ごめんなさい」

  昼間でも寂れた児童公園、雨の夜中に人がいる訳がない。
  王様の耳は、ロバの耳。
  そう叫ぶには、もってこいの場所で。

  謝ることが出来るならば、楽だろう。
  ごめんなさい、私が引き止めていたんです。
  
  ……待っていたことを知られる方が、辛い場合もある。

  そんなことが分かってしまう自分がいる。
  そんな事態を防ぐことは、出来ないくせに。
  
 「……もう、決めたの。もうやらないの」

  ぶらんこを無茶苦茶に揺する。食いしばった歯から、小さく呟いて。

 「もう二度と、女の子の誕生日に、一緒に飲みませんかなんて言わない」

  たった一人の人に、かけられる幾つもの想いの強さ。
  そんなことにも気が付かないでいた。
  気が付かれないことを相手が望んでいたとすれば、これもまた己の傲慢に
過ぎない悲鳴で。
  けれども、痛みだけは本当で。

  糸の始点……自分が彼女を誘ったこと
  糸の終点……狭淵さんが、待ち続けたこと
              大家さんが、待ち続けたこと……

  中間点に何を置いても、全て言い訳でしかない。

  「いわ……ないから……っ!」

  滑る手を、鎖に絡ませて。
  ざん、と水溜まりに足を突っ込んで。

  かけられていた、想いの強さ。
  その、重さ。
  分かることが出来ないほどの。

  許さないのは、己自身。
  許せないのは、己自身。
  故に……繰り返す。

  「……ごめんなさい……!」

  幾度も。
  その全てが、呑み込まれるまで。

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  一晩中泣いてーないーてー、ないーて……ってこれは中島みゆきさんの
「慟哭」ですな(汗)
  このシーンが頭に浮かんだ途端、この歌が頭に浮かびまして。

  けじめの付けられない失敗って、辛いものだなあ、と。
  
  で、美樹さんが来る時は、けろりとして迎える……まあ、
そこら辺は美学です(爆)

  でわっ。

 
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  『Hitch your wagon to the Star in Heaven』
 
          いー・あーる(nakazono@ffpri.affrc.go.jp)
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