[KATARIBE 10245] [ha06][nv] 「あなたならどうする〜戦闘編〜狭淵美樹の場合」

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Date: Mon, 15 Jun 1998 15:44:14 +0900
From: ad2045@geocities.co.jp (Fukanju Rosei)
Subject: [KATARIBE 10245] [ha06][nv] 「あなたならどうする〜戦闘編〜狭淵美樹の場合」
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199806150644.PAA21194@geocities.co.jp>
Posted: Mon, 15 Jun 1998 15:44:20 +0900 (JST)
X-Mail-Count: 10245



  ども、不観樹露生@階段で滑って転んで打撲傷……あ、一句読めてる  です。はい。



  うぅぅぅ〜〜〜〜惨すぎる(T_T)

  しかし書いてしまった物はどーしよーもないのであった(鬼畜)

  だって、美樹の方の出眼が悪すぎるんですもん(T_T)

  それでも、何度か致命的な部分への打撃は数回回避したんですが……

  やっぱり無理でした(^^;

  初期条件、悪過ぎですね。発作起こしてますし(^^;



  と、言うわけで、ユラ嬢の誕生日に向けて贈る狭淵美樹小説三部作、

  その2「あなたならどうする 〜戦闘編〜 狭淵美樹の場合」

  です。



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「あなたならどうする 〜戦闘編〜 狭淵美樹の場合」



  痛み。それは痛み。左胸の奥から生じて、肋間神経の走向に沿っ

ていきなり暴れ出す、痛み。馴れた発作。まだ馴れない痛み。

  わたしは、左胸を押さえる。眼を閉じている。身体を折る。足元

がふらつく。倒れるように、しゃがみ込む。何かが、肩に当たった。

人の声。男性の声。

「し、失礼……」

  声を絞り出す。痛みで、声がかすれる。

「にーちゃん、人にぶつかっといて、いう事はそれだけぇ?」

  頭上から、声がする。わたしは胸を押さえたまま顔を上げる。

「申し訳ない。少々、発作で……」

  わたしの声は、唐突に遮られる。

  わたしは路上にひっくり返っている。無様だ。右肩に、ゆっくり

と痛みが帰ってくる。蹴られたのだと、理解する。

「さっさと出すもん出せ、っつってんだよ」

  肩を押さえつけているのは、バスケットシューズ。

  出す物。つまりは金銭。

  要するにわたしは絡まれていると言うわけだ。

  最悪。夕方にバイト代を受け取らねば、吹利から京都までの電車

賃すらないというのに。これでは、大人しく幾ばくかを差し出して

引き取っていただくという選択肢もないようなものだ。

「いや……」

  持ち合わせがないことを説明しようとした瞬間に、何を勘違いし

たのか男の足が、わたしの腹を蹴る。腹部だけは、腕を伸ばしてか

ばう。衝撃が、骨に来る。その上に、まだ、発作もおさまっていな

い。声も、出せない。

  体を起こそうとする。

「おらっ、さっさと出さねぇか!」

  蹴られている。次から次へと伝わってくる打撃。世界が廻る。ア

スファルトと、空が衝撃の度に入れ替わる。

  腹部と、頭部だけは……本能的にかばおうとしても、気慰みにも

なっていないのだろう。既に腕の感覚もなくて。

「……」

  何か男が言ったような気がする。

  死んだらいやだな……ユラさんへの誕生日プレゼントも渡せない

で死んだりしたら。

  悲しすぎる、な……



  ………………



  冷たい物が、顔に当たる。

  意識がゆっくりと浮上する。

  雨?

  目を開けようとする。痛みが走る。頬が、何かごつごつした硬い

物に当たっている。

  もう一滴、雫。

  身体が動かない。

  ゆっくりと思い出している。

  記憶と共に全身から痛みが蘇る。

  雫は、一滴、一滴、そのペースを早めていく。

  このまま、動けなかったら、風邪を引くだろうな。そんな呑気な

ことをつい考えている。

  頬に当たっているアスファルト。気温がさほど低くないから、雨

もそんなに冷たくはない。左の瞼を開けようとすると激痛が走る。

  右目だけを開ける。もう、陽は落ちている。少なくとも、7時は

廻っている。バイト代の受けとりも、今日はもうできない。4時の

待ち合わせだったのだから、もう帰っているだろう。普通の病院も、

もう閉まっている。第一、金がない。それに、バイト先にしろ、病

院にしろ、取りあえず動けなければ行きようもない。

  身体を、動かす。取りあえず、指先から。そして、腕、足と、ゆ

っくりと慎重に動かしていく。鈍痛、激痛。痛みをこらえながら、

無理矢理、笑みを作る。

「まぁ、大丈夫ですな」

  声を出す。これだけ、痛む場所が多いと、胸の傷跡の痛みもさほ

ど気にはならない。それに、幸いなことに、骨が折れているという

事だけはないようだ。

  起き直る。雨は、もうわたしをずぶぬれにしている。

  取りあえず、這うようにして遠くに転がっているショルダーバッ

グの所まで辿り着く。民家の軒先になっているおかげで、バッグは

雨に濡れていない。

  ジーンズの尻のポケットを探る。財布がなくなっている。入って

いたのは23円だけのはずだが、カード類は再発行が必要だ。

  もう片方のポケットに入れていた、クレジットカード入れと免許

証は無事。別々に分けて持っていたのが幸いしたようだ。

  そして……ショルダーバッグを開ける。本は無事。一冊数万はす

る本達の価値は彼には判らなかったらしい。

  だが……なくなっている。

  ユラさんへの誕生日プレゼント。

  持っていって、何をしようというのやら。

  わたしは、諦め顔で苦笑する。

  それにしても、あれをもう一度買い直すのなら、明日と明後日は

バイトでつぶさなきゃならない。生活費のことは……取りあえず後

回しにするしかない。

  ユラさんの誕生日は、明明後日なのだから。



                                                  (終わり)

************************************************************



  …………美樹、強く生きろよ(と、仕組んだ張本人が言う(爆))

  じゅーぶん強いと思うんですけどね。精神的に。





  というわけで、その3「誕生日に贈る奇想曲」に続きます。










…………。…………。…………。…………。…………。…………。…………。
不観樹露生(ふかんじゅ・ろせい)          今月の標語
ad2045@geocities.co.jp             一日一膳
fukanju@geocities.co.jp             ……努力目標かも
http://www.geocities.co.jp/Technopolis/2045/fukanju.html
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Denei/4097/index.html
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