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Date: Thu, 11 Jun 1998 18:56:27 +0900
From: lh86010@hongo.ecc.u-tokyo.ac.jp (S.S.Kakegawa)
Subject: [KATARIBE 10184] [HA06]EP: 『昨夜の雨で』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <199806110956.SAA00595@hongo.ecc.u-tokyo.ac.jp>
Posted: Thu, 11 Jun 1998 18:56:39 +0900 (JST)
X-Mail-Count: 10184
蘆会%最近MLはご無沙汰でございます。
一行掲示板の方で出ていた「キャットテイル」なるものの話題から、こんな
ミニEPを思いついてしまいまして。
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エピソード『昨夜の雨で』
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松蔭堂、梅雨どきの早朝。
昨日まで降り続いていた雨の音は、もう聞こえていない。
訪雪 :「……さて、と。朝飯に何を作るかね……」
凍雲はまだ起きてこない。
小声で懐メロを口ずさみながら、狭い縁側に面した雨戸をがらりと開けた、
そのとき。
SE :「にゃあ」
SE :「ふにぃ」
少し間の抜けた子猫の鳴き声のような音が、耳に飛び込んでくる。
一匹、二匹……いや、もっと沢山。
訪雪 :「ふむ。……どれどれ」
湿っぽい濡れ縁の板に膝をつけて、音のする場所を覗き込む。
縁の下の暗がりに、薄茶色の毛皮をかぶったものがもかもかと群れていた。
訪雪 :「なるほどねえ。しかし、えらいことになったな」
縁の下に手を突っ込むと、茶虎の毛皮の群れがざわりと奥に逃げ込む。が、
決してそこから出ていこうとはしない。
金色に光る目が、いくつもかたまってこちらを窺っている。
縞模様の尻尾らしきものもくねくねと揺れている。しかし……
訪雪は縁から立ち上がって、奥の六畳の引き戸を開ける。
訪雪 :「先生。起きてくれませんか」
凍雲 :「うん?……なんじゃ、訪雪」
訪雪 :「いや、縁の下に妙なもんが。とにかく来てください」
懐中電灯を手にした訪雪の後について、寝間着のままの凍雲も縁側に出る。
二人して縁の下を覗き込み、電灯の灯りをそちらに向けると、かたまっていた
ものたちは一斉にふうっ、と威嚇の声を上げた。
凍雲 :「ふむ」
訪雪 :「私も最初は、近所の猫が仔でも産んだか、と思ったんで
:すがね。これは……」
一件猫に見えるそれは、猫の尻尾の先に子猫の頭がついたような、奇妙な生
物だった。
尻尾の一端は土に潜っているらしい。見ようによっては、ひとつ所から猫の
頭つきの尻尾が株になって生えているようにもとれる。
凍雲 :「ほう。これはまた、珍しいものが生えたの」
訪雪 :「生えた?」
凍雲 :「うむ。梅雨時になると、たまに陽当たりの悪い、こんな
:場所に生えることがあっての。もっとも儂も、この前最後
:にこいつを見てから、もう30年ほどになるが……まだこの
:辺にも、生き残っておったんだのう」
訪雪 :「はぁ(汗)……で、何なんです、これ……いや、こいつ
:らは」
凍雲 :「さてのう。まあ、放っておいてもにゃあにゃあ鳴くだけ
:じゃから、心配は要らんよ」
ねこくさ(?):「にゃああおん」
はぁ、と戸惑いがちな返事をして、訪雪は屈めていた腰を伸ばした。
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わはは、落ちてない。
謎のねこしょくぶつおすそわけ希望な方はいまのうちに〜(をい)
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君がいるから、僕がいる。
東松原蘆会(ひがしまつばら・ろかい)
lh86010@hongo.ecc.u-tokyo.ac.jp
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Namiki/6525/