[KATARIBE 10127] HA06:EP: 「絶対の左」

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Date: Mon, 8 Jun 1998 13:53:45 +0900
From: "E.N." <nakazono@ss.ffpri.affrc.go.jp>
Subject: [KATARIBE 10127] HA06:EP: 「絶対の左」
To: kataribe-ml@trpg.net
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In-Reply-To: <9806080328.AA01316@150.26.109.137.ss.ffpri.affrc.go.jp>
Posted: Mon, 08 Jun 1998 13:50:38 +0900
X-Mail-Count: 10127

            こんにちは、いー・あーるです。
         皆さん、こんにちは。

  今日の昼休み、纏めたEP、流してなかったので(忘れてた(爆))

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EP:「絶対の左」
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  某日、瑞鶴にて。

  麻樹   :「左手を手の平を上にして握り拳を作る」

  神妙な顔をして、左手を握ってみる千影と花澄である。 

  麻樹   :「これが大体心臓の形になるな。で、手首のほうが上で、
         :そこが大動脈」

  二人の手が、揃って妙な具合に曲げられる。

  千影   :「大動脈って……」
  麻樹   :「大動脈は、直径4〜5センチ。ほとんど見かけはゴムホースだな。
         :弾力もある。ただ、あちこち動脈硬化で固まってる場所も
         :あるけどな」

  もう一度握り拳をまじまじと眺める千影、指で直径4〜5センチの輪を
作ってみる花澄。

  千影   :「……この大きさに、4〜5cmの血管が…すごすぎるぅ」
  花澄   :「それだけ太い血管に、ばくばく血を流しているんですねえ……」

  暫し沈黙。
  人体の神秘に、圧倒されているらしい。

  千影   :「……あ、そうだ、麻樹さん、「北斗の拳」で出てきたサウザー
         :みたいに逆心臓の人っているんですか?」

  何か、古い名前が……(汗)

  麻樹   :「内臓逆位の方は実在する。ただ、他の障害をたくさん持っている
         :人がほとんどだ。たいていは、重篤な先天性心疾患を持っているし、
         :消化器系も先天的に異常がある場合が多い」
  花澄   :「原因は……」
  麻樹   :「まだ不明だな。ああ、ただそれに関係あるっぽい遺伝子が
         :見つかったという話はあるんだが」
  花澄   :「ということは、内臓逆位って遺伝するんですか?」
  麻樹   :「遺伝って……それ以前に妊娠可能年齢まで生き延びれるだろうか? 
	 :それに、例え生き延びれても妊娠、出産が可能だろうか? 
         :という訳で、遺伝するかどうかは良く判ってない。遺伝子が
         :見つかったと言っても、その発現蛋白が胚発生初期で、左右不
	 :整合な発現の仕方をするって事が見つかっただけだしな」
  花澄   :「………」

  妊娠可能年齢まで、生き残ることすら難しい。
  その言葉は、重い。

  千影   :「やっぱ逆のままじゃ正常動作しないんですか……」
  花澄   :「そんなひどい疾患が、内臓が逆位だというだけで起こるとしたら……
         :どこで左右のずれって、そこまで深刻化するんでしょうか」
  麻樹   :「体内の重要パーツの基本配列を決定する遺伝子が欠落していると
         :考えればいい。内臓の逆位というのは、決定要因の遺伝子の不在で、
         :曖昧なまま内臓ができてしまっているんじゃないかというふうに
         :考える人もいるらしい」
  花澄   :「………成程!」
  麻樹   :「極端な話、座標軸が一本足りない訳だから」
  千影   :「決定要因の不在が原因なら、左右逆って言ってもきれいに真裏に
         :なるわけじゃない。だから、いろいろな障害がおこってくる」
  麻樹   :「心臓を左にする遺伝子がないというだけで、心臓を右にする
         :遺伝子がある訳ではないからな」
  花澄   :「……そういう意味で左右不均衡なんだ……」

  花澄の脳裏に、ふとある言葉が飛び出してくる。
  絶対の左。
  左か右か、の、選択は無い。
  あるとすれば左か、その他の異常位置か、の二つ。
  All or nothing (一切か絶無か)、の二つ。

  花澄   :「昔、大学で物理の先生に言われたんですけどね」
  千影   :「はい?」
  花澄   :「闇ってものはない。闇とは、光の無い状態だって。光子が
         :あるかないか、それは同じ重みを持つわけではないって」
  麻樹   :「……へえ」
  花澄   :「似てるなって、思ったんです」

  50という言葉はない。
  99と言う言葉さえ、無い。
  0か、100か。
  そう言ってしまえば、妙に厳しい印象がある。
  しかして、その法則が、現に今、自分達を律している。

  花澄   :「何か……考えさせられる話題ですね、人体の神秘って」
  千影   :「…たしかに」

  絶対の左、絶対の右。
  二人は揃って、左の握り拳に視線を向けた。

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  ………てなことを、あれから考えていました。
最初から中盤にかけては、五月末の「ぶらっく+人体の神秘」
の会話からとりました。
(で、その際の会話のメンバーが、不観樹さんとK’さんと、いー・だった、と)
……口調修正、その他諸々、宜しくお願いします m(_ _)m

本当はもっと大量ですし、ここだけ抜き取るのも実は勿体無いんですが
……あとのブラック部分も何とかしたいなあ(爆)

  物理の中で一番近いといえば、この、「闇と光」の考え方と、
あとは「対称性の自発的な破れ」ですかね。
鏡に写した姿と、元の姿とにずれが出てくる、という……
…………詳しいことは忘れた(をいっ)

うん、でも、この考え方は、すとん、と落ちました。
視点がすとん、と変わる……みたいな。

いやあ、おもしろいです。
そして………やっぱり、不思議です。

でわっ

 
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  『Hitch your wagon to the Star in Heaven』
 
          いー・あーる(nakazono@ffpri.affrc.go.jp)
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