[KATARIBE 10070] HA06:EP: 「いい子」

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Date: Fri, 5 Jun 1998 10:03:42 +0900
From: "E.N." <nakazono@ss.ffpri.affrc.go.jp>
Subject: [KATARIBE 10070] HA06:EP: 「いい子」
To: kataribe-ml@trpg.net
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In-Reply-To: <9806030328.AA01308@150.26.109.137.ss.ffpri.affrc.go.jp>
Posted: Fri, 05 Jun 1998 10:00:33 +0900
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        こんにちは、いー・あーるです。
      皆さん、こんにちは。

一度、くすのきさんに「いー・さんとことは(ぬいの)数が違います」と
言われて………で、ふと思いついたEP(をい)。

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EP  「いい子」
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  某日、朝。

  譲羽   :『やだやだやだあっ』
  花澄   :「やだ、じゃないでしょう?」
  譲羽   :『でもやだあっ(泣)』

  ぢたぢたぢた。
  座布団の上でまぐろよろしくばたばた暴れる木霊の少女である。

  花澄   :「仕方ないの。今日は、大家さん、出かけられるってお聞きしたし」
  譲羽   :『でも、闇ぬい君達、いるもんっ』
  花澄   :「だから、心配なの。いっつもうるさくして、ご迷惑お掛けしてる
         :でしょう?」
  譲羽   :『ご迷惑なんて、おかけしてないもんっ(憤然)』

  ……自覚がここまで徹底的に無いと、花澄としても溜息が出る。

  花澄   :「それでも。今日は、松蔭堂にいったら駄目」
  譲羽   :『やだやだやだあ(半泣き)』
  花澄   :「駄目」
  譲羽   :『かすみぃ……(べそべそ)』
  花澄   :「駄目ったら、駄目(きっぱり)」

  擬似とはいえ母親業。甘いばかりでは勤まらない。

  花澄   :「今日一日くらい、いい子にしてらっしゃい」
  譲羽   :『〜〜〜〜っ!!』

  ぽふ、と頭を優しくたたかれては、怒りと文句の持って行き場がなくなる。
  寝そべった座布団の端を、譲羽はきりきりと噛んだ。

  花澄   :「じゃ、行ってきます」

  ぱたん、と扉が閉まり、かちゃかちゃと小さな鍵の音が続く。
  薄暗い部屋に、譲羽は一人取り残された。

  譲羽   :『花澄の意地悪ーーっ』

  ごねても、座布団を叩いても、花澄は戻ってこない。
  どんなに泣いても、涙はこぼれない。
  しばらくすると、何だかすっかり疲れきって、譲羽は座布団の上に転がった。

  いい子にしてらっしゃい、と、簡単に言うけれども。
  こんな時には、本だって面白くない。薄暗い部屋の中、自分だけが一人で
ころころしている…………

  譲羽   :『花澄ぃ…………』

  今度は淋しくて淋しくて、べそをかきだした譲羽の頭を、ぽんぽん、と
誰かが撫でた。

  譲羽   :『……?』
 
  顔を上げると。

  譲羽   :『ニコラス君と、ラヘル……』
  
  サンタの格好のクマぬいはニコラス、羊のぬいはラヘル。
  その二名(?)が、心配そうにこちらを眺めている。

  譲羽   :「………(ぽむ)」

  すくっと、譲羽は座布団の上に立ち上がった。

  譲羽   :『みんなっ!ゆずの言葉、分るんなら、おきるのっ!』

  ざわ、と、何かが蠢いた。

  譲羽   :『李紅、花衣、久宇(りく、かい、くう)!』

  ころころころ、と、20cmくらいのクマが三体、本棚から飛び降りる。

  譲羽   :『月耳に雪遠!ラックとレイツァン、それに芽菜(めな)!』

  次から次へと、飛び出してくる犬だの猫だのクマだののぬい。

  譲羽   :『星槎(せいさ)、緇単(したん)もっ!』

  ぴょん、と弾む足取りで近寄るぬい達。
  すっかり機嫌を直して、譲羽はぴょこぴょこ跳ねた。

  譲羽   :『じゃ競争……本棚登り!一番早いの誰?』

  とてとてとて、と、途端に一間のアパートの中に、小さな足音が充満した。


  …………さて、昼前。

  譲羽   :『ゆずだって、押し入れから飛べるもんっ……ニコラス君、退いてっ 』
  ニコラス:「……あぶないこと、してるね(心配げ)」
  譲羽   :『大丈夫なのっ……えいっ』

  と、弾みを付けて、押し入れの中から飛び出したところで。

  SE   :かちゃり☆
  譲羽   :「……?!」

  扉の形に、光が射し込む。
  一瞬、ぬいたちが硬直する。

  花澄   :「……こんな事だろうと思った(溜息)」

  静かに靴を脱ぎ、ゆっくりと部屋に入る。
  ぬい達が、ゆっくりとあとずさる。

  花澄   :「……戻んなさい」

  ひゅい、と、風が吹き戻したように、ぬい達は元の位置に戻った。
  無意識のうちに腕組みをしてそれを見やっていた花澄は、ふと、
視線を足元に落とした。
  ぺたんと座り込んだ譲羽、と……

  花澄   :「……お前達は?」

  静かに問われて、二体のぬいが顔を上げた。

  ニコラス:「ぼくらは」
  ラヘル :「ゆずちゃんの、ぬいだから」
  花澄   :「……成程(くす)」

  どこか、鈍重に聞こえる声。
  それでもそれは、揺るぎない。

  花澄   :「で、何やってたの、ゆずは?」
  譲羽   :「…………(ぶすっくれー)」

  そこで、何にもしてない、と、言い募るほどには……譲羽もすれてない。

  花澄   :「いい子にしててね、って言わなかった?(苦笑)」
  譲羽   :『いい子なんて、あきちゃったよぅっ!(拗ねっ)』
  花澄   :「………(飽きるほど長い間、いい子にしてたわけないのに)」

  思ったが、流石に口には出さない。

  花澄   :「……それで、どうするの?」
  譲羽   :「…………」
  花澄   :「瑞鶴に、来る?ニコラス君とラヘルも一緒に?」
  譲羽   :「………(無言でこっくり)」

  手を差し出すと、ふくれたまま、それでもその手に縋りついてくる。

  花澄   :「……ゆーず(苦笑)」
  譲羽   :「……(ぷいっ)」

  二体のぬいごと抱え上げて、そのまま抱きしめる。
  
  花澄   :「……ゆずは、いい子よね(笑)」
  譲羽   :「……(ふくれっつら)」

  おかしくて…そして静かに脅えながら、花澄はくすくすと笑い続ける。
  何時まで、この時は続くのだろうか。

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……と言うわけで。
あと、うちに居るクマ(その他のぬいも含めて)の名前は
蓬矢(ほうし)、天河、ウィニー、テスィエ……あとまだいたな(爆)

以前、照日、春陽(てるひ、はるひ)というクマもいたんですが、
どちらも貰われてゆきました。

……で、何がやりたかったのかというと。
家のクマの名前、一度、連呼してみたかった……と(核爆)

時間としては、「座敷わらし」の直後です。

では。

 
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  『Hitch your wagon to the Star in Heaven』
 
          いー・あーる(nakazono@ffpri.affrc.go.jp)
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